「そもそもマスタリングって何?必要な機材は?」
「具体的なマスタリングのやり方を知りたい!」
曲を完成させた後、さらに音質を上げるにはどうしたら良いかと悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
実は、マスタリングという作業を通して音質、音圧等を調整すれば、よりクオリティの高い楽曲を制作することができるのです!
本記事では、作曲初心者向けにマスタリングの基礎知識から基本的な5つの手順について解説します。
最後にマスタリングに関するおすすめの本を2冊を紹介しているので、この記事と合わせて読めば、誰でもマスタリングをしっかりと理解して実践できるようになりますよ!
以下の記事では、初心者向けの作曲に関する本を紹介しているのでぜひご覧ください。
目次
1. マスタリングとは
マスタリングとは、作曲した曲を、あらゆる環境で最適に再生されるように微調整することを指します。
より専門的に言うと、ミキシングして作られた2トラック音源(トラックダウン音源、または2ミックス音源とも言う)を、機器を用いて加工したり調整したりすることです。
マスタリングを完了させると、CDやDVDやBD、インターネット上の投稿サイトといった最終的なメディアに書き出すことができます。
音量調節、音のバランス、迫力、音圧調整などマスタリングを最大限にこだわって、よりクオリティの高い楽曲に仕上げましょう。
(1)マスタリングを行う理由
マスタリングを行う1番の理由が、複数ある楽曲を聞きやすくするための音質調整です。
アルバム制作を例にとれば、各楽曲ごとにエンジニアなど複数の作業者がいるのが通常です。
各エンジニアは各自の好みとスキルを発揮し、音質はもちろん、全体的な音量、ボーカルの大きさまで異なった曲調に仕上げていますが、適切なマスタリング作業を終えるとアルバム全体に統一感を持たせることができます。
マスタリングを美容室でイメージすれば、カット・カラー・パーマなどが楽曲制作の過程で、仕上げのスタイリングやヘアメイクがマスタリングであると考えると分かりやすいかもしれません。
また、音楽を聴く環境がさまざまである現代においては、どのような機器や方法で再生しても納得のいく音を届けることが、マスタリングを行う目的であり必要性と言えるでしょう。
(2)マスタリングに必要な機材
マスタリング作業で使用する主な機器には、音質を補正するイコライザー(EQ)、音の強弱の差を縮め音圧を調節するコンプレッサー(COMP)、音量を一定のレベル以下に抑えるリミッターがあります。
アルバム内に優しいメロディのバラード曲、アップテンポな激しいポップスなど様々なジャンルが混在していた場合、1曲聴き終えた後、リスナーが違和感を感じることなく次曲につながるようにしなくてはなりません。
マスタリングを行わず曲をそのまま並べただけでは、音量差があったり、歌詞の聴き取りづらさなどがあり、聴いていると耳が疲れてしまいます。
そこで、イコライザー(EQ)、コンプレッサー(COMP)、リミッターを用いて、歌い手の声に艶を出したり、楽器の音色に厚みを出したりと、必要に応じて様々な音の補正や調整を行う必要があります。
さらに素材の音源にノイズが多くボーカルが埋もれているような場合には、ノイズ除去作業を行うこともあります。
これらの機器を用いて行うマスタリングは音を変えることのできる最後のチャンスであり、楽曲制作における総仕上げの工程と言えます。
(3)マスタリングとミキシングの違い
音楽制作において、作曲→編曲と来れば、次はミキシング→マスタリングの工程に進みます。
ミキシングとマスタリングは混同されがちですが、実際には全く違う作業です。
ミキシングは個々の楽器やパート、DAW(Digital Audio Workstation)で作曲する場合はトラック毎に、適切な処理を行って曲をまとめ上げる作業です。
ミキシングを行う1番の目的は楽曲のバランスを取ることであり、それぞれのパートの調和が取れているか、アーティストが意図した世界観にまとまっているかをチェックします。
それに対しマスタリングでは、ミキシングの視点から一歩下がって、「その楽曲がどの環境下で聴かれても、意図された状態を維持したまま再生できるか」にフォーカスを当てて作業します。
さらに、マスタリングではアルバムの収録曲を通して聴いた時に、違和感がないように曲同士の質感を揃えるということも行います。
このように、ミキシングとマスタリングは目的が違い、異なる視点で作業することを覚えておきましょう。
以下の記事では、レコーディングの具体的な手順を紹介しているのでぜひご覧ください。
2. 基本的なマスタリングの手順5つ
ここでは、マスタリングにおける、基本的な5つの手順を解説します。
マスタリング作業では、音質を補正するイコライザー(EQ)、音の強弱の差を縮め音圧を調節するコンプレッサー(COMP)、音量を一定のレベル以下に抑えるリミッターなど各種機材を使用するのであらかじめ準備しておきましょう。
順に解説します。
(1)2トラック音源をインポートする
まずは、マスタリング用に準備した2トラック音源をDAW(Digital Audio Workstation)に取り込みます。
2トラック音源とは、多くのトラックに分けて多重録音されたものを混ぜ合わせ、音質や抑揚を決めて一つの曲にまとめたもののことです。
マスタリング素材はよりピュアな状態にしておく必要があるため、録音/ミックスダウン時のビットレート・サンプリングレートで書き出します。
この時、参考にしたい楽曲などのマスタリング済みデータも読み込んで参考にしながら作業を行うのもよいでしょう。
このような使用法のデータをリファレンスと呼びます。
(2)各種プラグインをインサートする
次に、各プラグインを設定します。
標準的なプラグインを使用する場合、エフェクトが掛かる流れに合わせて、コンプレッサー→リミッター→イコライザーの順に読み込んだトラックにインサートしてください。
インサートする、つまりトラックに直接エフェクトを挿すことを意味しますが、プラグインを重ねるごとに元の音がどんどん加工されていきます。
他にもマスタリングに有益なプラグインは存在しますが、今回は初心者にとって扱いやすい3つのプラグインであるコンプレッサー、リミッター、イコライザーを用いて、この順にエフェクターを掛けていきます。
(3)コンプレッサー(COMP)で波形の山を削る
次にコンプレッサー(COMP)を用いて、波形の山を削ります。
DAWで楽曲制作する利点として、オーディオデータの音量分布を視覚的に捉えられることがあります。
波形を眺めながら、1曲全体を通して聴くことで、音量が大きい部分と小さい部分について視覚と聴覚を紐づけることが可能です。
その特徴を生かして、弱々しい音を迫力ある音に変えたり、前に出すぎてる音を引っ込めたり調整しながら、コンプレッサーで音の聴こえ方のバランスを取っていきます。
山を小さくすることを「コンプを深くかける」とか「音をしっかりつぶす」といった言い方をしますが、ある一定以上のレベルの部分を山の形を保ったまま圧縮していきます。
音の最大レベルと最小レベルの差(=ダイナミックレンジ)を小さくすることで、リスナーは耳に負担がかからず聴き取りやすくなります。
(4)リミッターで音圧を上げる
次は、リミッターで音圧を上げていきます。
リミッターは、入力音量が予め設定された値(スレッショルドレベル)を超えた場合に、その変化を設定した比率で減少させて、音量の最大値を固定する機材です。
過大入力が起こらないようにする、つまり、音量を一定のレベル以下に抑えるためのストッパー的な役割を持ち、リミッターを入れることで、録音の歪みを防いだり、スピーカーが破損しないよう保護することができます。
市販のCDと比べて「音が小さい」と感じる時はリミッターで音を圧縮して、曲全体の音量を上げてみましょう。
(5)イコライザー(EQ)で音域の処理をする
最後に、イコライザー(EQ)を使用して、低域を削ったり、高域を足したり音域の処理をします。
イコライザーとは、録音・ 再生時の音の補正に使用される、音声信号の周波数特性を変更する音響機器のことです。
一般的なマスタリングでは、30Hz以下の低域の音は人間の耳には聴こえにくいため、イコライザーを用いてカットしていきます。
不要な帯域をカットすると各音色のぶつかり合いを避けることができるので、曲にまとまりを出すことができるでしょう。
3.マスタリングを簡単に!初心者におすすめ2冊を紹介!
ここでは、作曲初心者がマスタリングについて独学で学びたい時に適した、おすすめの2冊を紹介します。
順に紹介します。
(1)マスタリングTCP/IP―入門編―(第6版)
ベストセラーの『マスタリングTCP/IP 入門編』を、時代の変化によるトピックを加えて内容を刷新し、第6版として発行したものです。
TCP/IPとは、インターネット接続のための標準プロトコル(通信規約)のことです。
豊富な脚注と図版・イラストを用いたわかりやすい解説でTCP/IPの基本をしっかりと学ぶことができるため、マスタリングについての基礎的な理解を深めたい人に最適です。
- 値段:2,420円
- 品種:単行本
- 著者:
- 発売日:2019/12/1
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(2)DAWミックス/マスタリング基礎大全
この本では、マスタリングに必要な基本テクニックを体系的に学びながら、同時に体験することができます。
DAW上でのミキシング/マスタリング作業に必要な基礎的知識について、オンラインDTMスクール「Sleepfreaks」講師が丁寧に解説しています。
主要なDAWユーザーに対応するユニバーサルな記述になっていること、また、実践工程に使用しているプラグインは標準規格のものに限定しているので、マスタリング初心者にも理解しやすい内容です。
さらに、WAVファイル(Windows標準の音データファイル)に対して、実際に音量バランスを整えたり音質を調整したりできるので実践的なスキルを身につけたい人におすすめの一冊です。
- 値段:2,200円
- 品種:単行本
- 著書:大鶴 暢彦
- 発売日:2019/10/26
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まとめ
作曲初心者にとってマスタリングは一見難しそうにも思いますが、目的と基本手順を理解した上で何度も繰り返していると、バランス調整が上手くできるようになります。
今回紹介したやり方を参考に、少しずつ作業を進めてみてください。
プロのスキルを借りるのも良いですが、自分でトライしてみることは貴重な経験になるはずです。
なお、以下の記事では、プロの作曲家になるための方法について解説しているのでぜひご覧ください。