「米津玄師の馬と鹿はどんな曲?」
「馬と鹿にはどのような特徴があるの?」
このように思ったことはありませんか?
馬と鹿は、米津玄師ならではの複雑で緊張感のある曲に乗せてまっすぐなスポーツ愛を歌った楽曲です。
今回の記事では、馬と鹿の基本情報や人気の理由を紹介するとともに、馬と鹿コードの特徴を詳しく解説していきます。
この記事を読んで馬と鹿コードについて理解し、ぜひご自身の曲作りにも取り入れてみましょう。
目次
1.馬と鹿とは
馬と鹿は、米津玄師が2019年にリリースした楽曲で、ドラマ「ノーサイド・ゲーム」の主題歌として、またラグビーワールドカップ2019とのコラボレーション楽曲としても有名です。
本曲は、社会人ラグビー部の奮闘を描いたドラマの主題歌として書き下ろされ、物語の展開とともに歌詞の真意が読み解かれていく過程が高く評価されました。
また、コードやメロディには複雑なテクニックが多用されているにも関わらず、誰もが楽しめるJ-POPに昇華されており、幅広い層から支持されました。
その結果、2019年度を代表する歌として、ビルボードジャパンダウンロードソングの年間2位やオリコンデジタルシングルの年間2位を記録するなど大ヒットを遂げたのです。
このように、馬と鹿はラグビーを題材にしたドラマの主題歌としてリリースされ、ドラマファンを中心に大きな支持を集め2019年を代表するヒットナンバーになりました。
2.馬と鹿が人気の2つの理由
次に、馬と鹿が人気の理由を以下の2つの観点から説明します。
- スポーツへの愛と尊敬をまっすぐに感じられる
- 複雑なテクニックが多用され不気味で中毒性がある
順番に説明します。
理由1:スポーツへの愛と尊敬をまっすぐに感じられる
馬と鹿が人気の理由の1つ目に、スポーツへの愛と尊敬をまっすぐに感じられる点が挙げられます。
本曲はラグビーを取り扱ったドラマ「ノーサイド・ゲーム」の主題歌として書き下ろされました。
ちょうど同じ時期にサッカー観戦にはまっていた米津玄師は、スポーツ選手の痛みや傷を追っても目標を遂げるために一心不乱に挑む姿に感動を覚え、この楽曲を作り上げました。
タイトルの「馬と鹿」からは「馬鹿」という単語が連想されますが、我を忘れるほどの熱狂的な瞬間を表現したいとの想いからこのタイトルが付けられたそうです。
このように、馬と鹿はスポーツへの愛と尊敬がまっすぐに感じられる楽曲で、ドラマファンのみならず多くのリスナーから大きな支持を受けました。
理由2:複雑なテクニックが多用され不気味で中毒性がある
馬と鹿が人気の理由の2つ目に、複雑なテクニックが多用され不気味で中毒性がある点が挙げられます。
本楽曲にはモーダルインターチェンジやセカンダリードミナントが多用され、楽曲のキーがあいまいに感じられます。
その結果、少し不気味で不穏な雰囲気が演出されており、中毒性があります。
本曲のMVも、米津玄師がバックダンサーに体を引っ張られながら歌う姿や天井からつるされて燃える松明など、独特の雰囲気ですよね。
歌詞ではスポーツ愛をまっすぐに表現しつつも、曲調までストレートにしすぎず複雑なテクニックを使ってくるところなど、さすが米津玄師です!
米津玄師の他の曲については、以下の記事でも詳しく述べていますので参考にしてください。
このように、馬と鹿のメロディーやコード進行には複雑なテクニックが使われ、不気味な雰囲気を演出しつつも、全体としては大衆的なポップソングにまとまっています。
3.馬と鹿のコードの特徴
ここからは、馬と鹿のコードの特徴を、以下の4つのパートに分けて解説していきます。
- Aメロ
- Bメロ
- サビ
- Cメロ
順番に説明します。
(1)Aメロ
馬と鹿のAメロのコード進行は以下の通りです。
|Cm |A♭ B♭|E♭ B♭/D Cm |F7 B♭|
”歪んで傷だらけの春 麻酔も打たずに歩いた”
E♭ Cm | A♭ B♭| E♭ B♭/D Cm | F7 B♭ E♭|
”体の奥底で響く 生き足りないと強く”
2~3小節目の「A♭→B♭→E♭→B♭/D→Cm」は、4516進行(循環進行)をベースに4音目にB♭/Dコードを追加したイメージです。
この追加音により、ベースラインが順次下降していますね。
(2)Bメロ
馬と鹿のBメロのコード進行は以下の通りです。
|A♭ E♭ |Bdim Cm |D♭ E♭ |Fm |
”まだ味わうさ 噛み終えたガムの味 冷めきれないままの心で”
|B♭m A♭ |G7 Cm |Fm7 B♭ |E♭ |E♭7 |
”ひとつひとつなくした果てに ようやく残ったもの”
1~2小節目の「A♭→B♭→Bdim→Cm」では、3音目にdimコードが経過音として使用されています。
この3音目が追加されていることで、前後のコードが半音でつながれ、スムーズな流れに聞こえます。
3~4小節目の「D♭→E♭→Fm」のD♭コードはモーダルインターチェンジと呼ばれ、E♭のナチュラルマイナーダイアトニックコードから借用されたものです。
また、5~6小節目の「B♭m→A♭→G7→Cm」のB♭mはE♭ナチュラルマイナーダイアトニックコードです。
このように、マイナーコードがいくつか紛れ込んでいるため、暗い雰囲気も持つ不協和音のような印象を受けます。
この後7~8小節目の「Fm→B♭7→E♭」がツーファイブワン進行となり、E♭メジャーの進行に戻っていきます。
(3)サビ
馬と鹿のサビのコード進行は以下の通りです。
|A♭ B♭ |Cm F7 |Dm7(♭5) G7 |Cm C7 |
“これが愛じゃなければなんと呼ぶのか 僕は知らなかった”
|A♭ B♭ |Cm F7 |A♭ B♭ |Cm F7 |
”呼べよ 花の名前をただ一つだけ 張り裂けるくらいに”
|A♭ B♭ Cm Gm|A♭ B♭ Cm E♭|
“鼻先が触れる 呼吸が止まる”
|A♭ B♭ Cm Gm|A♭ B♭ E♭ |
“痛みは消えないままでいい”
1~2小節目の「A♭→B♭→Cm→F7」のF7コードはセカンダリードミナントです。
しかし、次のコードにドミナントモーションしているわけではないという珍しい形です。
3~4小節目の「Dm7(♭5)→G7→Cm→C7」の1・2音目はツーファイブワン進行で、3音目のCm(E♭メジャーの平行調)へと解決し、C7コードを挟んで次の小節へつなげていきます。
9小節目の「A♭→B♭→Cm→Gm」からは1拍単位でコードが変わり、疾走感が演出されています。
コード進行は王道進行の3・4音目を入れ替えた形で、安定感がありますね。
10小節目の「A♭→B♭→Cm→E♭」は4561進行です。
(4)Cメロ
馬と鹿のCメロのコード進行は以下の通りです。
|E♭m B♭m B G♭|Fm7 G7 Cm D7|
”何に例えよう 君と僕を”
|Gm Cm F B♭|Dm7(♭5) G7 Cm |
”踵に残る似た傷を”
|E♭m B♭m B G♭|Fm7 G7 Cm|
”晴れ間を結えばまだ続く”
|A♭ B♭ Cm Gm|A♭ B♭ E♭ |
”行こう花も咲かないうちに”
1小節目の「E♭m→B♭m→B→G♭」は全てE♭ナチュラルマイナーダイアトニックコードが使われており、楽曲のキーはE♭マイナーということになります。
2小節目の「Fm7→G7→Cm→D7」の4音目のD7は唐突感がありますが、3小節目のGmコードへのセカンダリードミナントと考えられます。
5小節目の「Dm7(♭5)→G7→Cm」はCマイナーのツーファイブワン進行です。
Cメロは全体的にキーが曖昧で、ノンダイアトニックコードやモーダルインターチェンジも多用されています。
その結果が、不気味な様子が強く伝わり、強い緊張感が表現されていますね。
まとめ
今回の記事では、馬と鹿の基本情報や人気の理由を紹介するとともに、馬と鹿コードの特徴を詳しく解説しました。
馬と鹿は、米津玄師ならではの複雑で緊張感のある楽曲に乗せてまっすぐなスポーツ愛を歌った楽曲です。
この記事を読んで馬と鹿コードについて理解し、ぜひご自身の曲作りにも取り入れてみましょう。