「コード譜でよく目にするサブドミナントて何? 」
「サブドミナントは演奏上でどのような役割をするの? 」
私たちが普段耳にする音楽の多くは、メロディーとコードの組み合わせにより成り立っています。
サブドミナントもその一つで、楽曲を構築する上で欠かせない存在です。
では、そもそもサブドミナントとはどのようなものなのでしょうか?
実は、サブドミナントは3コードの仕組みを押さえれば理解しやすいです!
本記事では、3コードの仕組みを交えながら、サブドミナントとはどのようなものなのかについて紹介します。
目次
1.サブドミナントとは何か?
サブドミナント(下属音)とは、ダイアトニック・スケール(全音階)の4番目(Ⅳ)に当たる音で、Cのダイアトニック・スケールの場合ならFの音を指します。
ダイアトニック・スケールの配列は、以下の表のようにⅠ~Ⅶのローマ字で表記され、原曲のキー(調性)が変わった場合でも、コード進行の内容が一目で判断できるようになっています。
特にⅠの音をトニック(主音)、Ⅴの音をドミナント(属音)と呼び、サブドミナントとともに曲を構成する上で重要になります。
また、サブドミナントをルート(根っこの音)としたコード(和音)をサブドミナントコード(下属和音)と呼び、Cのダイアトニック・スケールではFコード(ファ・ラ・ド)が当たります。
キーコード | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵ | Ⅶ |
C(ド) | C | Dm | Em | F | G | Am | Bm(♭5) |
D(レ) | D | Em | F♯m | G | A | Bm | C♯m(♭5) |
E(ミ) | E | F♯m | G♯m | A | B | C♯m | D♯m(♭5) |
F(ファ) | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Em(♭5) |
G(ソ) | G | Am | Bm | C | D | Em | F♯m(♭5) |
A(ラ) | A | Bm | C♯m | D | E | F♯m | G♯m(♭5) |
B(シ) | B | C♯m | D♯m | E | F♯ | G♯m | A♯m(♭5) |
ダイアトニックコードについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
(1)サブドミナントコードは3コードの1つ
3コードとは、主要三和音とも呼ばれている基本的な和音で、トニックコード(主和音)、サブドミナントコード(下属和音)、ドミナントコード(属和音)の3つから構成されています。
この3和音は以下のような特徴があり、このような特徴を生かして楽曲制作は行われます。
- トニック:安定しており曲の最初や最後で使われて曲をまとめる
- サブドミナント:やや不安定で次のコードに移動したがる傾向がある
- ドミナント:不安定でトニックコードに移動する傾向がある
Cのダイアトニック・スケール上での3コードは、トニックコードがC(ド・ミ・ソ)、サブドミナントコードがF(ファ・ラ・ド)、ドミナントコードがG(ソ・シ・レ)になります。
私たちが耳にするポピュラー音楽のほとんどが、この3コードを土台としているため、音楽初心者の方でも聴けばすぐに分かるコード進行だと言えます。
(2)身近にあるサブドミナントコードの例
先述した3コードは音楽の基本となるコードなので身近な音楽に多数使用されています。
例えば、誕生日の定番曲『ハッピーバースデーの歌』は、4コードだけで構築された作品で、コード進行は以下のようになります。
C (ドミソ) | G(レソシ) | G(レソシ) | C(ドミソ) | ||||
ハッピー | バースデー | トゥー | ユー | ハッピー | バースデー | トゥ | ユー |
C(ドミソ) | G7(ソシレファ) | F(ファラド) | |||||
ハッピー | バースデー | ディア | ○○ | ||||
F(ファラド) | C(ドミソ) | G7(ソシレファ) | C(ドミソ) | ||||
ハッピー | バースデー | トゥー | ユー |
この曲は基本的にはトニックコードであるCコードとドミナントコードであるGコードで構成されています。
しかし注目したいのは、この曲のクライマックスの手前である「ディア○○」の部分でサブドミナントとなるFが加えられている点です。
先述したように、サブドミナントコードは次のコードに移動したくなるように感じさせる特徴があるため、クライマックスを盛り上げる良い役割を果たしています。
また別の例ではスピッツの『チェリー』があげられます
Am(ラドミ) | Em(ミソシ) | F(ファラド) | C(ドミソ) | |||
ささ | や | かな | よ | ろこび | を | |
Am(ラドミ) | Em(ミソシ) | F(ファラド) | G(レソシ) | C(ドミソ) | ||
つぶ | れる | ほど | だき | しめ | て |
チェリーのサビでは2小節ごとにサブドミナント→トニックの動き用い、比較的落ち着いた雰囲気で進んでいきます。
しかし、サビのラストではサブドミナント→ドミナント→トニックで大きく動くことで、曲の一区切りが強調される進行となっています。
上記のようにサブドミナントコードは曲のメインとはなりませんが補佐として大きな働きを見せます。
次章ではサブドミナントの応用について紹介します。
2.サブドミナントの応用
この章ではサブドミナントについてさらに理解を深めるため、サブドミナントの応用について解説します。
- サブドミナントマイナーとは
- サブドミナントの代理コードとは
順に解説を行ないます。
(1)サブドミナントマイナーとは
サブドミナントマイナーとは、ノンダイアトニックコードの代表的な種類のうちの1つです。
ノンダイアトニックコードとは楽曲のスケール外の音で構成されるコードのことです。
通常の楽曲を制作する際は、1つのスケール内の音のみで構成した和音であるダイアトニックコードのみを使用し安定した音楽を構築します。
しかし、曲中にスケール外の音で構成した和音であるノンダイアトニックコードを含むことで、よりコード進行が多様化し曲の雰囲気を大きく変えることができます。
サブドミナントマイナーコードは、ノンダイアトニックコードでありながらサブドミナントとしての機能を有するため、楽曲に良い不安定感を導くことが可能です。
使い方は、サブドミナントをマイナーコードに置き換えるだけの実にシンプルな方法ですが、名曲の多くに使用されている王道のコード進行だといえます。
以下はMr.childrenの『innocent world』のサビに使用されているサブドミナントマイナーコードの例です。
F♯m(ファ♯ラド♯) | G♯m(ソ♯シレ♯) | Am(ラドミ) | E(ミソ♯シ) |
また | どこかで | 会えるといいな | イノセントワールド |
『innocent world』はEメジャースケールの楽曲なので通常はA(ラド♯ミ)がサブドミナントコードとして使用されます。
しかし、サブドミナントマイナーコードであるAm(ラドミ)を使用することで、サビが一層悲壮感を得て曲を成り立たせます。
なおサブドミナントマイナーについては、以下の記事で詳しく解説します。
(2)サブドミナントの代理コードとは
代理コードは、あるコードに対して響きが似ているコードを指し、コード進行の多様性を深める技法です。
例えば、Cのダイアトニック・スケール上では、サブドミナントであるF(ファ・ラ・ド)の代理コードはD(レ・ファ・ラ)となります。
一般的にメジャースケールでのサブドミナント(Ⅳ)コードの代理はⅡmやⅡm7です。
サブドミナント代理(Ⅱm7)→ドミナント(V7)→トニック(Ⅰ-7)のコード進行をツーファイブワン進行と呼び、ジャズの基本的な技術として使用されます。
代理コードを使用すると、楽曲そのものの雰囲気が大きく変化しますので、3コードに慣れてきたら、ぜひ活用してみてくださいね。
まとめ
サブドミナントは、トニックとドミナントと共に3コードと呼ばれる主要三和音の一つで、楽曲を構築する上で欠かせないコードです。
サブドミナントがどのようなコードなのかを理解するためには、まず3コードの仕組みを押さえるのがベストだといえます。
そして、3コードを使った楽曲をたくさん聴くことも大切です。
楽曲を聴く際のポイントは、メロディーをイメージしながら、それぞれのコードを意識してみることです。
そうすることで、より具体的にドミナントの性質を理解することができます。
ぜひ参考にしてください!