「王道進行って具体的にはどんなコードなんだろう?」
「王道進行が使われている曲を知りたい!」
作曲活動を行っている人の中には、王道進行という言葉はよく聞くけれど難しそうと敬遠している人もいるのではないでしょうか。
コード進行の中でも王道進行は音楽ジャンルを問わず使用される定番のコードです。
本記事では、作曲初心者にも分かりやすい言葉で王道進行の基礎知識を解説します。
さらに、JPOP・アニソン・ボカロにおいて王道進行が使用されている曲を紹介しますので、ぜひ聴いてみて今後の作曲活動に生かしてくださいね!
以下の記事では、小室進行について解説しているのでぜひご覧ください。
1.王道進行の基礎知識
王道進行は「王道」という名前が意味するように、音楽ジャンルを問わず頻繁に出てくる定番のコードです。
最新の曲をチェックするとおそらく5曲以内に1曲はこのコードを使った曲が出てくるのではというくらいの頻出ぶりです。
それは王道進行がキャッチーなメロディを作るのに向いていて、その上日本語の歌詞との相性が良いからです。
このことから王道進行はJpop、アニソン、ボカロなど幅広いジャンルで使用され、さらにはヒット曲を量産できる進行とも言われています。
(1)王道進行とはどんなコード進行なのか
王道進行の具体的な進行は以下の通りです。
度数:ⅣーⅤーⅢmーⅥm
Key=C:FーGーEmーAm
王道進行は4コードで構成されたシンプルなコードで、3つめのⅢmに最もアクセントが置かれます。
度数の数字部分を並べて「4536進行」と呼ぶこともあります。
音楽プロデューサーである亀田誠治氏は、多くのヒット曲で使われている魅力的なコード進行として王道進行を「小悪魔コード進行」と名付けて紹介したこともあります。
また、スキマスイッチの大橋卓弥は「音楽を始めたころに一番初めに覚えたコード進行。これを知っておけば色々な楽曲を弾けるようになる」と語り、アーティストの間でも浸透しているコードです。
(2)王道進行がヒット曲に使われる理由
王道進行が多くのヒット曲に使われている理由は、明るい響きと暗い響きが両立することで、切ない情感を表現できるからです。
王道進行の仕組みを紐解いてみると、最初のⅣ→Ⅴ (F→G)がサブドミナント(下属音)→ドミナント(属音)という流れになっていて、その後Ⅰに進行すると思いきや、暗い響きのするⅢm→Ⅵm(Em→Am)へとつながっています。
このことが爽快感、疾走感といった高まる気持ちを感じさせながらも焦らしを与えられるという、じれったい気持ちにさせるのです。
そのため王道進行は特にサビで使われ、「ここぞ!」というときのインパクトのあるフレーズに使用すると効果を発揮します。
もちろんサビ以外でも使うことができますが、盛り上がる進行なのでサビがその雰囲気に負けないようにする注意が必要です。
(3)王道進行は循環コードである
王道進行の特徴のひとつとして、循環コードであることが挙げられます。
循環コードとは半永久的に繰り返すことができることを意味し、そのためサビを王道進行だけで成立させる例も多いです。
同じコードが繰り返されると聴き手は「飽き」を感じることがありますが、王道進行では「緊張と緩和」を繰り返すことで人の心を引きつけ翻弄する力があります。
このように王道進行はシンプルでありながら盛り上がるメロディーを作ることができることで、作曲初心者にも使い勝手が良いコードです。
作曲を始めたばかりなら、まずはこの王道進行を使って作曲に挑戦してみましょう。
2.王道進行の3つの派生パターン
上記で紹介したコード進行は基本形で、実際の楽曲では少し変化して登場することも多いです。
3つの派生パターンを紹介します。
順に解説します。
(1)派生パターン① (セカンダリードミナントを使用する方法)
王道進行の1つ目の派生パターンは、セカンダリードミナントと呼ばれるものです。
ⅣーⅤーⅢmーⅥm(基本形)
ⅣーⅤーⅢ7ーⅥm(派生パターン①)
Emコード(Ⅲm)の部分をセブンスコード(○7)にしたパターンです。
このアレンジによって、基本形の王道進行と比較して一気にドラマティックな印象になります。
そのため派生パターン①を使えば、ヒット曲には欠かせない”泣きのコード”へと変貌させることができるでしょう。
(2)派生パターン② (dimコードを使用する方法)
王道進行の2つ目の派生パターンは、Emコード(Ⅲm)コードの部分を変化させてdimコードにします。
ⅣーⅤーⅢmーⅥm(基本形)
ⅣーⅤー#VdimーⅥm(派生パターン②)
Ⅲ7とコード構成音がほぼ同じであることから派生パターン①と似ているものの、ルート音が異なっているため受ける印象が大きく異なります。
”エモい&もの悲しげな雰囲気”を強調したいときに用いると効果が高いでしょう。
(3)派生パターン③ (Vを付け足す方法)
王道進行の3つ目の派生パターンは、最後にV(Gコード)を付け足した形です。
ⅣーⅤーⅢmーⅥm(基本形)
ⅣーⅤーⅢmーⅥmーⅤ(派生パターン③)
ベースラインが徐々に下降していくので、次のコードとのつながりがスムーズになります。
そのため派生パターン③は、王道進行を繰り返し使用したい場合に便利なアレンジ方法です。
3.【ジャンル別】王道進行が使用されている曲6選
王道進行はJpop、アニソン、ボカロまで幅広い楽曲に使用されています。
「邦楽で最もヒットを生みやすいコード進行」 とも言われ、初めて聞く曲でも王道進行が使われていると 日本人には親しみを感じるはずです。
王道進行を意識して、以下の曲をぜひ聴いてみてください。
では、それぞれ見ていきましょう。
(1)王道進行が使用されているJPOP
JPOPでは王道進行がしばしば使用されています。
全盛期に比べて使用頻度は落ちたとは言え、それでも頻繁に使われているコードです。
順に解説します。
#1: HANABI / Mr.Children
Mr.ChildrenのHANABI では、サビの部分に王道進行が使われています。
Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm
Ⅱm→Ⅴ→Ⅱm→Ⅴ
「決して捕まえることのできない 花火のような光だとしたって」と言う部分が、Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵmと王道進行になっています。
さらに、「もう一回 もう一回 もう一回 もう一回」と続くところのコードはⅡm→Ⅴ→Ⅱm→Ⅴになっています。
王道進行の後にはⅡm→Ⅴ→Ⅰと進行するパターン(ツーファイブワン)で終わることが良くありますが、この曲ではツーファイブワンが変形したⅡm→Ⅴ→Ⅱm→Ⅴと進んでいます。
実はこの流れは最初の和音が違うだけで王道進行と似ています。
さらに、Ⅱm と Ⅳ はともにサブドミナントなので、役割も似ています。
つまり、王道進行の基本形からツーファイブワンに入ったと見せかけてもう一度王道進行をリフレインさせることで複雑な味わいのある進行になっています。
Mr.Childrenの曲では王道進行は定番のコードで、Replay、youthful days、Any、HEROなどにも用いられています。
#2: ロビンソン / スピッツ
スピッツのロビンソンでは、イントロで王道進行が使われています。
Ⅳ | Ⅴ/Ⅳ | Ⅲ7 | Ⅵm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅲm7 |
Ⅳ | Ⅴ/Ⅳ | Ⅲ7 | Ⅵm | ⅣM7 | Ⅴ | Ⅵm | Ⅵm |
1~4小節目のコード進行は王道進行をアレンジした進行です。
5~8小節では「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7」で最後のⅥmを省略した進行、9~12小節目では1~4小節と同じ進行が登場します。
最後の13~16小節目では王道進行のⅣが冷たい響きのⅣM7へと置き換えられており、またⅢmが省略されてⅥmへと着地しています。
イントロはこの4小節を4回繰り返しますが、16小節全てが王道進行のバリエーションにより組み立てられていて、この王道進行のリフレインが感動的でありながらもどこかもの悲しさの残る雰囲気を表現することに成功しています。
#3: 気まぐれロマンティック / いきものがかり
いきものがかりの気まぐれロマンティックでは、サビに王道進行が使われています。
ⅣM7 | Ⅴ/Ⅳ | Ⅲm7 | Ⅵm7 | Ⅱm7 | Ⅴsus4 | Ⅰ | Ⅰ |
ⅣM7 | Ⅴ/Ⅳ | Ⅲm7 | Ⅵm7 |Ⅱm7 | Ⅴsus4 | Ⅰ | Ⅰ |
1~4小節目は王道進行に変化を加えたもので、オンコードやセブンス・コードが多用されています。
なかでも「ⅣM7→Ⅴ/Ⅳ(Ⅴ7の転回形)」の部分では、ベースが持続することで統一感のある響きが生まれます。
5~8小節目では「Ⅱm7→Ⅴsus4→Ⅰ」という進行が現れます。
こちらは、トゥーファイブ進行からのドミナント終止「Ⅱm→Ⅴ→Ⅰ」を変化させたもので、最後はトニックのⅠに着地しコード進行は綺麗に一区切りが付いています。
9~16小節目は1~8小節目を繰り返すことによって、アップテンポでキャッチーなメロディに仕上がっています。
このコード進行にボーカル吉岡聖恵の真っ直ぐな歌声、キュートな女心の本音を歌った歌詞がマッチし、いきものがかりの魅力が凝縮された代表曲のひとつと言えるでしょう。
(2)王道進行が使用されているアニソン
アニソンにおいても王道進行はよく登場します。
#1: God Knows… / 涼宮ハルヒ
涼宮ハルヒのGod Knows…では、サビで王道進行が使われています。
ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm | Ⅵm |Ⅱm | Ⅲm | Ⅵm | Ⅴm7 Ⅰ7 |
ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm | Ⅵm |Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵsus4 | Ⅵ |
この曲では1~4小節が王道進行で、1~2小節の「ⅣM7→Ⅴ」はトニックを導く緊張感のあるカデンツに、「Ⅲm→Ⅵm」は平行短調のドミナント終止が続いています。
ドラマティックで起伏の激しい、感情的なコード進行でサビを盛り上げるのに役立っています。
#2: ふわふわ時間 / 桜高軽音部
桜高軽音部のふわふわ時間では、Dメロで王道進行が使われています。
LINEミュージックではここから聴くことができます。
Ⅳ | Ⅳ | Ⅲm | Ⅵm7 |
Ⅱm7 | Ⅴ | Ⅰ | Ⅰ7 |
Ⅳ | Ⅳ/Ⅴ | Ⅲm | Ⅵm7 |
Ⅱ7 | Ⅱ7/♭Ⅴ | Ⅴ ♭Ⅴ Ⅳ | ♭Ⅳ Ⅳ ♭Ⅴ | Ⅴ | Ⅲ ♭Ⅲ Ⅱ |
Ⅰ ♭Ⅶ ♭Ⅲ | Ⅰ Ⅳ ♭Ⅲ | Ⅰ ♭Ⅶ ♭Ⅲ | Ⅰ Ⅳ ♭Ⅲ |
Ⅰ ♭Ⅶ ♭Ⅲ | Ⅰ Ⅳ ♭Ⅲ | Ⅰ ♭Ⅶ ♭Ⅲ | Ⅰ Ⅳ ♭Ⅲ |
Ⅴ | Ⅴ | Ⅴ | Ⅴ Ⅵm Ⅴ7/Ⅶ |
1~4小節目は王道進行を省略したもので、ドラマティックで切なげな印象です。
その後「Ⅱm7→Ⅴ」とオーソドックスなトゥーファイブ進行へ続き、Ⅰ7はⅣを導くセカンダリー・ドミナントで次のⅣと強く結びつきます。
19~26小節目では「Ⅰ→♭Ⅶ→♭Ⅲ→Ⅰ→Ⅳ→♭Ⅲ」とコードが進行し、メジャー・コードが連続して登場して伝統的なロック風サウンドが前面に押し出されています。
前半は切ない印象、後半はロック風のコード進行になっていて、徐々に開放的で明るい雰囲気に移っていくと言う対照的なコード進行になっています。
(3)王道進行が使用されているボカロ
ボカロと王道進行は相性が良いので、頻繁に使用されています。
- シャルル / バルーン
#1: シャルル / バルーン
バルーンのシャルルでは、サビで王道進行が使われています。
Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm7 | Ⅰ | Ⅳ | Ⅲ7 | Ⅵm7 | Ⅰ |
Ⅳadd9| Ⅴ | Ⅲm7 | Ⅵm7 | Ⅳadd9 | Ⅴ | Ⅵm7 | Ⅲ7 |
Ⅵm7 | Ⅴ |Ⅰ |
少しコードが変形していますが、5~6小節目が王道進行になっています。
独特の世界観を持った歌詞や緻密なアニメーションの施されたMVで人気を博した曲ですが、サビのコードに注目してみると魅力が再発見できるかもしれません。
このほかボカロ曲では、みくみくにしてあげる(ika)、ルカルカ★ナイトフィーバー(samfree)、六兆年と一夜物語(kemu)、ドーナツホール (ハチ)などでも王道進行が出現しますのでぜひチェックしてみてください。
まとめ
音楽活動をするうえで、コード進行は無視できない存在です。
作曲初心者の人にとっては難しいイメージがありますが、最初はいくつかのパターンを覚えることからスタートすることが大事です。
まずはヒット曲に頻出の王道進行から覚えて、ぜひ使ってみてくださいね!
なお、以下の記事でコード進行の一覧について解説しているのでご覧ください。