「倍音とはどのような意味?」
「倍音をどのように歌唱や曲作りに取り入れればいいの?」
このように悩んでいませんか?
倍音とは基本となる音の2倍以上の周波数を持つ音の成分のことを指し、うまく活用することで深みのある感動的な歌い方や自分の作りたい音を生み出すことが可能になります。
今回の記事では、倍音の概要を紹介するとともに、曲作りへの取り入れ方や倍音を意識した歌い方6ステップについても紹介します。
この記事を読んで倍音について正しく理解し、ご自身の曲作りや歌唱にも活かしてください。
1.倍音とは
倍音とは、基本となる音の2倍以上の周波数を持つ音の成分を指します。
音の高さは周波数によって決まり、周波数が高いほど高い音に、低いほど低い音になります。
例えば、ピアノで中央よりやや右の「ラ」という音の周波数は440Hzと決まっています。
しかし、音を鳴らした時によく耳を凝らしてみると、基本となる音に交じって密かに別の音も鳴っていることが分かります。
これは、基本となる音に加えて、基本の音の周波数の2倍・3倍・・・と整数倍の周波数の振動が同時に発生していることが原因です。
この、基本の音の周波数である最も少ない周波数を基音、基音の整数倍以上の周波数を倍音と呼ぶのです。
例えば、基音が「ド」の場合、2倍の振動数の音は1オクターブ上の「ド」、3倍の振動数の音はさらに上の「ソ」となります。
さらに4・5・6・7・8・9倍の振動数の音が「ド」「ミ」「ソ」「シ♭」「ド」「レ」と重なっています。
倍音に気付きにくいという方は、これらの音を頭にイメージしながら耳を澄ませてみると聞き取りやすいかもしれません。
同じ高さの音でも楽器や歌い方の違いによってこの倍音の含まれ方に違いが生まれるため、異なる音色が奏でられるわけです。
倍音が豊かであればそれだけ奥行のある音を奏でられるため、歌唱や曲作りでも倍音を意識することで感動的な曲に仕上げることができるようになります。
逆に倍音が全くない音はブザーのような人工的な電子音になり、実際には自然界に存在しません。
倍音とは基音の整数倍の周波数のことを指し、この倍音を意識することで、第一声からゾワっとさせるような感動的な歌い方ができたり、シンセサイザーで作りたい音を生み出すことができます。
倍音をさらに詳しくみていくと、整数次倍音と非整数次倍音の2種類があります。
整数次倍音は、上述の通り基音の整数倍の周波数のことを指し、カリスマ性や荘厳さを醸し出す効果があります。
整数次倍音の声を持つ代表的な歌手は、美空ひばりや浜崎あゆみ・郷ひろみなどです。
そのほかに、実際の音源の倍音には正確な整数倍ではなく、高めのものや低めの不規則な周波数のものが存在します。
これらを非整数次倍音と言い、音程感を感じにくくなる揺らぎが生み出されるために、親密性を感じられる効果があります。
非整数次倍音の声を持つ有名な歌手は、宇多田ヒカルや森進一・スガシカオなどです。
このように、倍音にはカリスマ性のある整数次倍音と親密性のある非整数次倍音の2種類が存在します。
2.倍音の曲作りへの取り入れ方
次に、倍音の曲作りへの取り入れ方を以下の2つの観点から解説します。
- 倍音の大きい楽器と小さい楽器
- 倍音を意識したシンセサイザーでの曲作り
順番に説明します。
(1)倍音の大きい楽器と小さい楽器
倍音の大きい楽器と小さい楽器をまとめたのが以下の表です。
楽器名 | 特徴 | |
倍音の大きい楽器 | ホルン・トランペット・オーボエ・クラッシュシンバルなど | 輪郭がはっきりした明るい音色 |
倍音の小さい楽器 | フルート・リコーダーなど | 柔らかくふわっとしたやさしい音色 |
それぞれの楽器ごとに倍音の出方・量が違うため、異なった音色が出せるわけです。
また、1つの楽器でもその種類によって倍音の豊かさは異なります。
例えばスタンウェイというブランドのピアノは倍音が豊かなことで有名です。
このため、スタンウェイのピアノを置くコンサートホールは多くのピアニストから人気があります。
このように、倍音の大きい楽器と小さい楽器があり、この違いがあることで、同じ高さでもはっきりした音やふわっとやさしい音といった違いを生み出すことができるのです。
(2)倍音を意識したシンセサイザーでの曲作り
シンセサイザーで曲作りを行う際に、倍音を意識することで効率的かつ理想に近い音が出せるようになります。
シンセサイザーで曲を作る場合、最初のステップとしてオキシレーターで波形を選択しますよね。
この波形は、それぞれ倍音の量が違います。
そのため、以下の表のようなオキシレーターの代表的な波形と倍音の量の関係を知っておくと、効率的に作りたい音を生み出すことができます。
オキシレーターの代表的な波形 | 倍音の量 | 特徴 |
ノコギリ波 | 多く含まれる | 派手な音 |
短形波 | ノコギリ波に比べてやや少ない | ノコギリ派に比べてやや丸めな音 |
三角波 | 短形波よりさらに少ない | 短形波よりさらに丸めな音 |
サイン波 | 全くなし | 無機質で注意を引きつける出る音。自然界には存在しない。 |
例えば、ベースソロを派手な音で目立たせたい場合には、ノコギリ波にセットしてみるとイメージに近い音が出せるでしょう。
このように、倍音の知識があることで、シンセサイザーでの曲作りをより計画的に行うことが可能になります。
3.倍音を意識した歌い方6ステップ
倍音を意識して歌うには、息と声を結びつけることと、共鳴させることが大切です。
整数次倍音は共鳴腔で、非整数次倍音は息で作られるからです。
この2つをうまくコントロールして思い通りの倍音を出せるようになれば、いつも響き豊かな歌声を出すことができるようになります。
具体的には、以下の6つのステップで歌うことを意識します。
- 短く息を吐く(息が抜けたりお腹に力が入らない方はステップ2からでも良い)
- 人差し指を前に出し、ろうそくの火を吹き消すように一気に息を吐く
- 紙を用意し、息を「フー」と吹きかけて揺らす
- 静かにしてほしいときの「シー」の発音で息を吐く
- 短く鋭い「ハッ」の発音で発生する(最初は自分の出しやすい言葉や高さで、慣れてきたら言葉や高さを変えて)
- 「アー」と長く声を伸ばしながら、最初は小さな声で徐々に大きな声を出していく
ただ回数をこなすのではなく、都度倍音を意識しながら精度を高める練習をしてみてください。
最初は思うように声が出せず息が抜けてしまったとしても、だんだんと慣れてきます。
どのような言葉やどのような高さでも柔軟に対応できるようになり、曲中で自在に倍音を操れるようになれば、人を惹きつける圧倒的な魅力のある歌い方ができるでしょう。
さらに、スタッカートの時に声のアタック・エッジをきちんと感じられるようになれば、倍音をかなり思い通りにコントロールできていると言えます。
このように、息のコントロールと共鳴を意識して倍音をマスターすることができれば、他人にはない魅力的な歌声を手に入れることができます。
まとめ
今回の記事では、倍音の概要を紹介するとともに、曲作りへの取り入れ方や倍音を意識した歌い方6ステップについても紹介しました。
倍音とは基本となる音の2倍以上の周波数を持つ音の成分を指し、うまく活用することで感動的な歌い方や作りたい音を生み出すことが可能になります。
この記事を読んで倍音について正しく理解し、ご自身の曲作りや歌唱にも活かしてください。