音楽用語「ダブリング」とは?ダブリングを用いるメリットと楽にダブリングする方法

「ダブリングってなに?何のために使うの?」
「ダブリングをしたいけど、録音に時間がかかってしまう」

ダブリングとは同じフレーズを重ねてメロディに厚みを加える音楽テクニックの1つです。

しかし、何度も同じフレーズを歌って音を重ねる手間を考えると、面倒に感じてしまいますよね。

この記事では音楽用語のダブリングの概要やダブリングを多用すると起こるデメリットを解説、何度も歌わなくてもダブリングできる方法を解説します。

最後にダブリングを使用した楽曲も紹介していますので、最後まで読んで新たなミックステクニックを学びましょう!

1.音楽用語のダブリングとは?

音楽用語のダブリングとは何か?まずは概要を解説します。

  1. 2つ以上の同じフレーズを重ねて厚みを加える手法
  2. ボーカルのサビで使用される
  3. ギターで音を強くする場合もある

ダブリングはレコーディングの際に使用する手法の1つです。

音に厚みを持たせるダブリングの概要を解説します。

(1)2つ以上の同じフレーズを重ねて厚みを加える手法

ダブリングとは英語で書くと”Doubling”となり、文字通り2つ以上の同じフレーズ・音色の音声を重ねる手法です。

2つの音を同時に録音することで、ボーカルに厚みが出たり、演奏の些細なズレがコーラスのように響き、存在感を出すことができます。

コーラスは歌う人の声質の違いを利用したテクニックですが、ダブリングは基本的に同じ声を持つ人が歌って重ねる手法のためコーラスには出せない独特の響きを演出できることが特徴です。

古くからダブリングの手法は多くのアーティストに使用されています。

(2)ボーカルのサビで使用される

ダブリングはボーカルのサビの部分で使用されることが多いです。

サビの部分に厚みを持たせて、曲の中で印象的なパートを作り上げるために用いられます。

メロディでサビを盛り上げる方法もありますが、ボーカルが一辺倒ではメリハリがつかないことがあるからです。

ボーカルのサビにダブリングを用いると、厚みが出てサビがより印象的になるでしょう。

(3)ギターで音を強くする場合もある

ダブリングはギターパートで用いられる場合もあります。

同じギター演奏を二重で録音して、ギターのメロディを強く・厚みを持たせることができます。

ギターの演奏がボーカルや他の音響に負けてしまうと、メロディラインが分からなくなるなどのデメリットがありますが、ダブリングを用いることでギター音をよりはっきり強調できるでしょう。

2.ダブリングを多用することのデメリット

ダブリングを多用することのデメリットも知っておきましょう。

  1. 音声が機械的になってしまう
  2. 通常の倍以上歌唱・演奏しなければならない

あまりにダブリングを用いると、耳障りになり曲の印象が悪くなる可能性があります。

(1)音声が機械的になってしまう

ダブリングを多用すると音声が機械的になってしまう可能性があります。

ボーカル音源のニュアンスやダイナミクスがかき消えてしまい、せっかくの生歌の良い部分が消えてしまう可能性があるので注意しましょう。

サビの部分にポイント的に入れるのは良いですが、生歌っぽさを生かすメロディの場合はダブリングしない方が良い場合もあります。

いくつか施策を作り、曲調に合っているダブリングができているかどうかチェックするようにしてください。

(2)通常の倍以上歌唱・演奏しなければならない

ダブリングを重ねるために、通常の倍以上歌唱や演奏をしなければならないのもデメリットです。

同じメロディを何度も歌い、その録音を重ねるのがダブリングのため、最低でも2回は同じ歌を歌わなければなりません。

ダブリングをするために何度も歌ったり演奏しているとレコーディングに時間がかかり、疲労してしまう可能性があります。

3.何度も歌わずにダブリングする方法

実は何度も歌わずにダブリングをする方法があります。

  1. ADTを使用する
  2. ギターの場合はエフェクターを使用する

ダブリングの手法はアーティストたちに昔から使用されていますが、やはり「何度も歌いたくない」という要望はあったようです。

何度も歌ったり演奏する手間を省きたい方は、この2つの方法を試してみましょう。

(1)ADTを使用する

https://wavesjapan.jp/plugins/reel-adt

ADT(Automatic Double Tracking)を使用すれば、歌を何度も歌わずにダブリングできます。

この仕組みは「The BEATLES(ビートルズ)」の”ジョン・レノン”が「同じ歌を何度も歌いたくない」と言ったために開発されました。

同じメーカーのテープレコーダーを2台用意し、レコーダー1から音源を再生し、レコーダー2でその音源を録音しながら再生することで、ボーカルのダブリングを行います。

音源自体は同じでもタイミングのズレが生じ、ダブリング効果を効率的に生み出せるものです。

ADTを使用すれば何度も歌わずにダブリングが手軽にできます。

最近は「Reel ADT」のようなプラグインも発売されているため、テープレコーダー2台を用意しなくても気軽にADTを使用できるようになりました。

(2)ギターの場合はエフェクターを使う

https://electori.co.jp/tcelectronic/MIMIQ_DOUBLER.htm

ギターのダブリングをしたい場合は、エフェクターを用いると便利です。

例えば「Mimiq Doubler」というエフェクターは、エレキギターの入力信号に対してリアルタイムでダブリング処理を行います。

マルチトラッキングと変わらないようなギターのズレ・ピッチを再現するため、スタジオでダブリングをした時と変わらない音を再現可能です。

ギターのダブリングを行いたい場合は、何度も演奏せずにエフェクターを使用すると良いでしょう。

4.ダブリングが使用された有名楽曲

ダブリングが使用された有名楽曲を紹介します。

  1. Master of Puppets/Metallica
  2. And I love Her/The Beatles

実際にダブリングがどのような効果をもたらすか聞いてみましょう。

1曲ずつ紹介します。

(1)Master of Puppets/Metallica

Metallicaの「Master of Puppets」もダブリング手法が用いられています。

ギタープレイをダブリングしており、厚みのある演奏に仕上げているのが特徴です。

ライブでもエフェクターでダブリングを使用していますが、わかりづらい方はCD音源バージョンを聞いてみましょう。

通常のギタープレイよりもリッチな音を演出しており、ダブリングはメタリカの有名なテクニックとなっています。

(2)And I love Her/The Beatles

The Beatlesの「And I love her」はダブリングが使われています。

比較のために、シングルボーカルバージョンも貼っておきますので、聴き比べてみてください。

メロディLINE自体は同じですが、ボーカルに厚みがあるのが分かるでしょう。

まとめ

ダブリングとは音楽用語で、ボーカルやギターなどのトラックを重ねて音に深みや厚みを持たせるテクニックのことです。

サビなどを印象的にするために使われますが、多用すると機械的な音声になってしまう点がデメリット。

また、何度も同じトラックを演奏・歌唱するため、時間がかかってしまうという難点がありました。

しかし、最近は技術が進化しておりエフェクターなどを使用してダブリングを再現できます。

自身の歌唱・楽曲にさらに厚みを持たせたいなら、曲作りにダブリングも使用してみましょう。

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