「転調を使ってみたいが、やり方が分からない」
「有名曲に使われてる転調の仕組みを詳しく知りたい!」
楽曲制作の際に転調を使ってみたいと思ったことがありませんか?
転調は曲にインパクトを与えることができますが、使い方を間違えるとまとまりのない曲になってしまいます。
この記事を読めば転調を上手に使えるようになります!
よく使われている転調のパターンもいくつか紹介しているので、是非参考にしてください。
目次
1.調とは
転調は多くの楽曲に使われていますが、理解を深めるためには基本的な音楽の知識が必要となります。
ここでは、転調について基本的なところから詳しく解説します。
(1)調とは
調とは音楽に起きる決め事のひとつで、転調を理解する上では絶対に欠かせない要素です。
ここでは、調について詳しく解説します。
#1:調とは
調には二つの意味があります。
ひとつは主役の音を表す場合(キー)で、もうひとつは主役の音から始まる音の集まり(スケール)を表す場合です。
例えば、ある音楽の中で「ド」からはじまる「ドレミファソラシ」の7音が主に使われる場合、キーはド(C)となります。
この7音の集まりのことをスケールといい、各キーを中心に最も自然に響く7つの音を元に構成されており、ダイアトニックスケールともいいます。
どの音がキーとなっても、枠組みさえ維持できていれば同じようにまとまりを感じることができます。
キーやスケールには、明るい響きを持つメジャーキー(メジャースケール)と暗い響きを持つマイナーキー(マイナースケール)があります。
メジャーやマイナーについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
また、ダイアトニックスケール上の音だけでできているコードのことを、ダイアトニックコードといいます。
ダイアトニックコードだけのコード進行なら、違和感のない楽曲を作ることができます。
各キーにおけるダイアトニックコードはそれぞれ以下のようになります。
キーコード | 音階(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)の順 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
C(ド) | C | Dm | Em | F | G | Am | Bm(♭5) |
D(レ) | D | Em | F♯m | G | A | Bm | C♯m(♭5) |
E(ミ) | E | F♯m | G♯m | A | B | C♯m | D♯m(♭5) |
F(ファ) | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Em(♭5) |
G(ソ) | G | Am | Bm | C | D | Em | F♯m(♭5) |
A(ラ) | A | Bm | C♯m | D | E | F♯m | G♯m(♭5) |
B(シ) | B | C♯m | D♯m | E | F♯ | G♯m | A♯m(♭5) |
また、それぞれのコードの構成音は以下のようになります。
コード | 構成音 |
---|---|
C | ド(C)・ミ(E)・ソ(G) |
C♯m | ド♯(C♯)・ミ(E)・ソ♯(G♯) |
D | レ(D)・ファ♯(F♯)・ラ(A) |
Dm | レ(D)・ファ(F)・ラ(A) |
D♯m | レ♯(D♯)・ソ♭(G♭)・ラ♯(A♯) |
E | ミ(E)・ソ♯(G♯)・シ(B) |
Em | ミ(E)・ソ(G)・シ(B) |
F | ファ(F)・ラ(A)・ド(C) |
F♯ | ファ♯(F♯)・ラ♯(A♯)・ド♯(C♯) |
F♯m | ファ♯(F♯)・ラ(A)・ド♯(C♯) |
G | ソ(G)・シ(B)・レ(D) |
Gm | ソ(G)・シ♭(B♭)・レ(D) |
G♯m | ソ♯(G♯)・シ(B)・レ♯(D♯) |
A | ラ(A)・ド♯(C♯)・ミ(E) |
Am | ラ(A)・ド(C)・ミ(E) |
A♯m | ラ♯(A♯)・レ♭(D♭)・ファ(F) |
B | シ(B)・レ♯(D♯)・ファ♯(F♯) |
Bm | シ(B)・レ(D)・ファ♯(F♯) |
B♭ | シ♭(B♭)・レ(D)・ファ(F) |
ダイアトニックスケールに関しては以下の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。
#2:調の種類
1つの曲はおおよそ1つの調を基本として構成されており、基準となる調は主調と呼ばれています。
1つの調には強く関係を持つ調をが複数存在し、以下ではそれぞれを紹介しています。
属調 Gメジャー 下属調 Fメジャー 平行調 Aマイナー 属調平行調 Eマイナー 下属調平行調 Dマイナー 同主調 Cマイナー
例えばキーがCメジャーであるとき、主調はCメジャーとなります。
5番目の音「G(ソ)」を中心としたメジャースケールが使用されるキーを属調と呼びます 。
4番目の音「F(ファ)」を中心としたメジャースケールが使用されるキーを下属調と呼びます。
6番目の音「A(ラ)」を中心としたマイナーキー、または3番目の音「E(ミ)」を中心としたメジャーキーを平行調といいます。
平行調は主調と全く同じ音を持つスケールによって成り立ちます。
また、平行調はGメジャーやFメジャーにも存在し、以下のように呼ばれています。
Gメジャーの平行調:Eマイナー 属調平行調
Fメジャーの平行調:Dマイナー 下属調平行調
Cメジャースケールと同じ「C(ド)」を中心としたマイナースケールを同主調といいます 。
これら6つは全て馴染みがあり深い関係にあるため、関係調と呼ばれています。
2.転調とは
調について理解できたところで、本題の転調について詳しく解説していきます 。
(1)転調とは
転調とは曲の途中で調(キー)の中心音と、中心音に基づく音のグループを変えることです。
曲のイントロ:Cメジャー
最後のサビ:Gメジャー
転調には多くのパターンがあるため、自然かつオリジナリティがでるように使えると作曲のレベルがかなり上がります。
(2)転調の種類
転調には一時的な転調と本格的な転調の2種類があります。
一時的な転調は曲中の一部のみを他の調にして演奏するもので、主にBメロに使われています。
一時的な転調は元の調に戻すという点を考慮しなければならないため、利き手に違和感を与えないように関係調を使うことが多いです。
本格的な転調は、調が戻らないまたはは多くの時間を転調後に使う場合のことをいい、様々な種類の転調が活用されます。
最後のサビから終わりまでを転調する場合などのことを指し、転調後のコード構成は転調前と同じであることが多いです。
(3)移調との違い
移調とは曲全体の調を別の調に変えて演奏することです。
転調の違いで一番大きい部分は、調を変化させる範囲が違うということです。
転調が楽曲の一部または途中から別の調へ変化させることを指すのに対し、移調は曲全体の調を変化させることを指します。
例えば、曲の1番2番と進んだ後に最後の大サビだけキーが上がることがありますが、このように途中で曲の音の高さが変化するのが転調です。
一方、移調はカラオケで自分の歌う範囲にキーを上げたり下げたりと調整して歌う場合のことを指します。
(4)転調のやり方 8選
転調は、曲に刺激的な展開を作り出すことができますが、やみくもに転調すると楽曲の統一感が失われます。
転調には多くのパターンがありますので、今回はその方法を8つ紹介します。
はじめは、このようなパターンを参考にして転調に挑戦してみるとよいでしょう。
#1:ドミナントモーションを使った転調
ドミナントモーションとは、ダイアトニックコードにおいてドミナント→トニックへのコード進行のことを指します。
ドミナントモーションについては以下の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
ドミナントモーションを使った転調とは、転調直前に転調後のドミナントセブンス(V7)にあたるコードを置く方法です。
CからC♯への転調 C→G♯7(V7)→C♯(I)
このようにキー=C♯におけるドミナントセブンス(G♯)を直前に置くことで、新しい調に対して自然なつながりをつくることができます。
#2:ピボットコードを使った転調
転調の前後の調に共通するコードのことをピボットコードといい、このコードを間に挟むことで自然な流れで転調することができます。
GからAへの転調
G→Bm7→A
Bmはキー=Gとキー=A両方のダイアトニックコードとして存在しているので、Bmがピボットコードとなります。
#3:楽曲終盤で半音から全音高いキーにいきなり転調
ドミナントモーションやピポットコードを使わず、いきなり転調する方法もあります。
この方法は意外とさまざまな曲で使われており、転調を最も明確に感じさせることができます。
始めから中盤 キー=D♭
↓
終盤 キー=D(転調)
例のように半音転調の場合、主に使われる音が大きく変わるので強いインパクトを残すことができます。
このような転調は大サビの直前などで使われることが多く、雰囲気がガラッと変わるのを強く感じることができます。
終盤で転調する場合(本格的な転調)はキーを戻す必要がないので意外と簡単に使えるので、初心者にはとてもオススメの方法です。
#4:直前にトニックに戻る転調
転調の直前にダイアトニックコードで最も安定しているトニックへ一度戻ると、どのキーへも転調がしやすくなります。
この転調の仕方を、フレーズモジュレーションといいます。
F♯からGへ半音上への転調
C♯(V)→F♯(I)→G(I)
一度トニックへ戻り(F♯)、そのまま転調後のキーでのトニック(G)へうつります。
安定感のあるトニックを並べることで曲に区切りをつけ、新たな雰囲気でスタートさせることができる方法です。
こちらも曲の終盤に使われる場合が多いです。
#5:平行調同主調または同主調平行調を使う転調
同主調と平行調を掛け合わせたものが平行調同主調または同主調平行調です。
例えばCメジャーの平行調はAマイナーとなるので、Cメジャーの平行調同主調はAメジャーです。
同様にCメジャーの同主調はCマイナーとなるので、同主調平行調はE♭メジャーとなります。
これらの平行調同主調または同主調平行調を使った転調もよく使われています。
Aメロ・Bメロ Cメジャー
サビ Aメジャー(転調)
この場合、サビでの転調は平行調同主調を使った転調ということになります。
このように同主調と平行調を掛け合わせた転調の場合、使う音が適度が近く関係が適度に薄いため扱いやすい上にインパクトも与えられます。
#6:前後で同じメロディを鳴らす転調
前後の音が同じメロディである部分を転調に使うことを、コモントーンモジュレーションといいます。
転調させない場合が Bメロ最後の音(Gm)=サビ最初の音(Gm)であるとき サビから半音上昇の転調をすると Bメロ最後の音(Gm)=サビ最初の音(Gm♯)
このように転調させる前が同じ音である場合、転調をより強調することができます。
終盤のBメロから大サビへの流れで使われることが多いです。
#7:ゼグエンツ(反復進行)を使う転調
特定のモチーフの高さをずらして反復する手法をゼクエンツといい、これを用いた転調もよく使われます。
反復進行を使い、同じフレーズを繰り返す場面で転調することをシーケンシャルモジュレーションといいます。
1番、2番のサビ A♭ 大サビ前(サビと同じメロディ) G(+♭1) 大サビ B♭(+♭3)
YOASOBIの「夜に駆ける」に代表されるように、大サビに入る前にサビと同じメロディを入れて反復するような曲があります。
このように、同じメロディでサビに向かって少しずつ転調していくのがシーケンシャルモジュレーションです。
#8:同主調を行き来する転調
同主調を行き来する転調のことをパラレルキーモジュレーションといいます。
同主調は同じ主音を持つメジャーキー、マイナーキーのことで、これらを決めるのはルート音から3度の音です。
つまり、3度の音を変化させることで同主調を行き来する転調を行うことができます。
イントロ Fメジャーキー Aメロ Fマイナーキー(転調) Bメロ Fメジャーキー(転調)
このように同主調での転調は、トニックが同じなので違和感の少ない転調をスムーズに行うことができます。
以下では転調のやり方について詳しく解説しているのでぜひ読んでみてください。
3.転調を使用した有名曲
転調は多くの曲で多くの曲で使われていますが、その中でも有名な楽曲は以下のようなものです。
群青日和/東京事変
愛をこめて花束を/superfly
明日も/SHISHAMO
嵐/Love so sweet
HANABI/Mr.children
有名曲を使った転調の解説は以下の記事をご覧ください。
まとめ
転調について理解することはできたでしょうか ?
転調を使うことで曲のバリエーションを増やしインパクトを大きく与えることができます。
しかし、やり方を間違えてしまうと曲全体まとまりが出なくなるので難しいところです。
転調について詳しく理解し、他の曲を参考にしながら上手に使ってみましょう。