「小室進行が使われている曲を知りたい!」
「小室進行ではどんなアレンジができるのだろう?」
作曲活動を行っている人の中には、小室進行を使ってみたいけれど難しそうと敬遠している人もいるのではないでしょうか。
ヒットしている楽曲のコード進行を分析してみると、小室進行が使われていることはとても多いです。
本記事では、作曲初心者にも分かりやすい言葉で小室進行の基礎知識を解説します。
さらに、JPOPにおいて小室進行が使われている曲を紹介しますので、今後の作曲活動や音楽活動に取り入れてくださいね!
以下の記事では、王道進行について解説しているのでぜひご覧ください。
目次
1. 小室進行の基礎知識
小室進行とは90年代に一世を風靡した小室哲哉氏が愛用したコード進行です。
90年代のJ-POPサウンドは小室氏の存在を抜きにして語ることはできず、数々のヒット曲を生み出したことで知られています。
小室進行は王道進行、カノン進行とともに三大進行のひとつに数えられ、2000年代に入ってもJPOPだけでなくアニメソングでもよく耳にするコード進行です。
また、作曲者の年齢層が比較的若いボカロ曲に用いられることも多いです。
(1)小室進行とはどんなコード進行なのか
小室進行の具体的な進行は以下の通りです。
|Am |F |G |C |
|Ⅵm |Ⅳ |Ⅴ |Ⅰ |
小室進行はシンプルな4コード進行であり、度数の数字部分を並べて「6451進行」と呼ばれることもあります。
マイナーコード(Ⅵm)から始まりメジャーコードで終わることで、切ないバラード曲での盛り上げる場面、また、疾走感のあるかっこいい楽曲で使用すると効果を発揮します。
その理由は、暗いⅥmから明るいⅣへ直接進行させることで強い解放感が生まれ、続くⅤ→Ⅰでさらに明るい印象が強まり、躍動感を与えることができるからです。
このことから、メジャーキーの楽曲に使用すると明るい曲なのに暗い雰囲気を併せ持つ、まさに哀愁漂う切ない感じを表現することができます。
2. 小室進行の2つの派生パターン
小室進行「Ⅵm⇒Ⅳ⇒Ⅴ⇒Ⅰ」を何度も繰り返すことは可能で、そのため小室進行だけで成立している名曲もたくさんあります。
ただし作曲するなら、既存曲と似たような曲を作りたくないと思うことでしょう。
ここでは曲作りの幅を広げるために、小室進行を軸としたアレンジパターン2つを紹介しますので、ぜひ自作の曲作りに生かしてください。
順に紹介します。
(1)派生パターン① (セブンスコードを使用する方法)
小室進行の1つ目の派生パターンは、セブンスコード(7)を取り入れたものです。
Am7→F7→G7→C→G7
Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅴ/ⅤⅠⅠ
セブンスコード(7)はボサノバやジャズなどに多用されるコード進行ですが、「大人っぽくて落ち着いたジャジーな雰囲気」を伝えたいときに向いています。
4音目が加わることによって音の厚さが増して中音域がしっかりと響くだけではなく、何度もループしても聞き手が飽きないことがメリットです。
C7ではなくCを使う理由は、C7では構成音であるド・ミ・ソ・シの「シ」の音が高すぎて、キンキンと耳障りになってしまうからです。
そのため派生パターン①は小室進行を繰り返して使用してもOKなアレンジで、落ち着いた印象をリスナーに与えたいときに効果的です。
(2)派生パターン② (4和音を使用する方法)
小室進行の2つ目の派生パターンは、4和音を使用するというものです。
Am7→F△7→G7→C△7
Ⅵm7→Ⅳ△7→Ⅴ7→Ⅰ△7
3和音と比較すると、都会的な洗礼されたイメージが強くなります。
そのためこの派生パターン②は、おしゃれな雰囲気をアクセントとして加えたいときにおすすめのアレンジ方法です。
また、日本語の歌詞はこの進行コードに乗りやすいため、邦楽との相性が良いというメリットもあります。
3. 小室進行が使用されているJPOP曲6選
小室進行に使用されている楽曲を紹介します。
順に解説します。
(1)TM NETWORK / Get Wild
TM NETWORKのGet Wildでは、サビで小室進行が使われています。
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅶ ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
ここでは、短調から平行長調の小室進行が利用されています。
マイナーコードのⅥmから始まりサブドミナントからドミナント終止と来て、メジャーコードのⅠへ着地するのが、小室進行の基本形です。
暗く冷たい雰囲気で始まり最後はかすかに明るくなるという「明暗」が生まれることで、ドラマティックでクールな雰囲気を与えます。
しかしながらGet Wildのサビでは小室進行の基本形に♭Ⅶが加わることで、さらに緊張感とスピード感が増す工夫がしてあります。
このようにサビに小室進行を用いることでメロディに刺激的な変化を持たせることができ、曲が生き生きと輝きます。
また、Aメロはサビの小室進行を少し抑え目にした進行になっていますが、このAメロの存在がサビの小室進行をより引き立てることに成功しています。
(2)爆風スランプ / Runner
爆風スランプのRunnerでは、サビに小室進行が採用されています。
Ⅰm ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Ⅰm ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
Runnerのコード進行では、G#の短調を主調とした、小室進行の最も基本的な形が登場しています。
暗い響きのⅥm(Ⅰm)から、緊張感・展開感と共にトニックを導く「Ⅳ→Ⅴ」(♭Ⅵ→♭Ⅶ)を経由し、明るい響きでドミナントの着地先であるⅠ(♭Ⅲ)へと着地しています。
これにより小室進行の特徴のひとつである、暗い雰囲気から一気に明るい雰囲気へ突き抜けるような開放感が生まれています。
ここで出てきたように短い間隔で同じカデンツの繰り返しの多いことが小室進行の特徴の1つです。
Runnerでは1~8小節目を通して小室進行を繰り返すテクニックが登場しますが、この循環こそが曲に展開感とスピード感を与えています。
また、Aメロにも「Ⅰm→♭ⅥM7→♭Ⅵ→♭Ⅶ→Ⅴm」という小室進行のアレンジパターンが登場し、この進行では、Ⅰmを内包する複雑な響きの♭ⅥM7や、マイナー・コードのⅤmにより、シリアスな雰囲気が強まっています。
(3)ゆず / 栄光の架橋
ゆずの栄光の架橋では、Aメロで小室進行が使われています。
Ⅰ | Ⅲm | Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅴ/Ⅶ |
Ⅵm | Ⅲm | Ⅳ Ⅴ | Ⅰ |
Ⅰ | Ⅲm | Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅴ/Ⅶ |
Ⅵm | Ⅲm | Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅴ/Ⅶ |
栄光の架橋は、Eの長調を主調とした、明るく力強く壮大な雰囲気のコード進行です。
5~8小節目が小室進行の基本形に繋ぎのⅢmを加えたカデンツになっています。
小室進行はクールでシリアスな響きが魅力的なコード進行ですが、ここではトニック代理のⅢmがクッションとして働き、クールとは無縁の暖かな響きが生まれています。
(4)レミオロメン / 3月9日
レミオロメンの3月9日では、サビに小室進行が採用されています。
Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ |
Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ |
Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ |
Ⅵm Ⅲm | Ⅳ Ⅴ Ⅰ |
3月9日は、Fの長調を主調とした、暗く厳粛な印象にわずかな明るさが加わったコード進行です。
1~8小節目を通して、コード進行は「Ⅵm→Ⅲm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」を繰り返しますが、これは小室進行の基本形にⅢmを加えたカデンツになっています。
つまり、トニック代理で平行短調のドミナントである、Ⅲm(Ⅴm)を挟み込んだアレンジを施しています。
不完全なドミナントのⅢmが挿入されることによって短調の暗さがより強調され、小室進行ならではのドラマティックな壮大な雰囲気がやや薄れている印象です。
最後はドミナントⅤからトニックⅠへ着地し、コード進行は一段落します。
また、小室進行のアレンジにおいては、ⅤとⅢmの構成音が一部共通していることから「Ⅵm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」と改変することもあります。
ただし、Ⅲmの部分にⅤを加えることでコード進行はよりクールで過激な印象を与えます。
ⅤとⅢmを置き換えるアレンジはよく見かけますが、得られる響きはこのように対照的になることを覚えておきましょう。
(5)マキシマムザホルモン / 恋のメガラバ
マキシマムザホルモンの恋のメガラバでは、サビに小室進行が採用されています。
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅵm Ⅴ/Ⅲ |
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅵm Ⅴ/Ⅲ |
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅵm Ⅵm/Ⅲ |
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ |
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅵm Ⅴ/Ⅲ |
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅵm Ⅴ/Ⅲ |
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ Ⅵm Ⅵm/Ⅲ |
Ⅳ Ⅴ | Ⅰ |
今回のコード進行では、明るく軽快な雰囲気の「Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅵm」が中心となっています。
まず、1~4小節目で「Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅵm→Ⅴ/Ⅲ」という進行が繰り返されますが、サブドミナントのⅣから始まることで期待感が高まる気持ちを呼び起こします。
そしてドミナントのⅤがトニックを導き、それから終止感を和らげるように、コードはその代理のⅥmへと着地します。
その後Ⅴ/Ⅲが登場し、コードが下行してベースが上行し、滑らかに次のⅣへと至ります。
次に、1〜2小節目を忠実に受け継ぐ5~8小節目のコード進行では、Ⅵm/Ⅲを皮切りにして区切りを生む「Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」が登場します。
このⅥm/ⅢはⅥmからベースのみが動いたコードであり、1〜2小節目のⅤ/Ⅲとは響きが異なります。
この違いこそがコード進行の区切りの兆候となっていて、その後に続く9~16小節目は1~8小節目と同じ進行を繰り返してコード進行は一区切りが付きます。
この進行は同じくポップな雰囲気の「Ⅱm→Ⅴ→Ⅰ→Ⅵm」や、これを反転させた「Ⅰ→Ⅵm→Ⅱm→Ⅴ」の仲間であり多くの曲で見られるコードです。
この進行は並びを変えると小室進行「Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」になり、これらのコードから生み出される響きには人を惹きつける力があることがわかります。
(6)大黒摩季 / あなただけ見つめてる<
Ⅰm ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
♭Ⅵ ♭Ⅶ | Ⅰm ♭Ⅵ ♭Ⅶ |
Ⅰm ♭Ⅵ | ♭Ⅶ ♭Ⅲ |
♭Ⅵ ♭Ⅶ | Ⅰm |
♭Ⅶ | Ⅰm |
今回のコード進行は、情熱的で攻撃的な雰囲気のコード進行になっています。
1、2小節目では「Ⅰm→♭Ⅵ→♭Ⅶ→♭Ⅲ」とコードが進行し、このカデンツは小室進行の基本形であると言えます。
クールで劇的な雰囲気が印象的な小室進行「Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」(Ⅰm→♭Ⅵ→♭Ⅶ→♭Ⅲ)と、終止感のある「♭Ⅵ→♭Ⅶ→Ⅰm」を組み合わせた構成となっています。
カデンツの繰り返しには「安定と不安定」を行き来して緊迫感を増す効果がありますが、今回のように「♭Ⅵ→♭Ⅶ→Ⅰm」が組み込まれると、ややゆったりとした情熱的な雰囲気を表現することを可能にします。
まとめ
音楽活動や曲を手がけるうえで、コード進行は無視できない存在です。
この機会に三大進行のひとつであり、ヒット曲に多用されている小室進行について詳しくなっておきましょう。
作曲初心者の人にとってコード進行は難しいイメージがあると思いますが、最初はいくつかパターンを覚えることからスタートすれば誰でもマスターすることができます。
今回紹介した小室進行を覚えて使って、ぜひあなたもヒット曲を生み出してください!
なお、以下の記事でコード進行の一覧について解説しているのでご覧ください。