クリシェとはどんな意味?コード進行4例とクリシェを使った楽曲4選

「作曲の技法としてクリシェという言葉を聞くが、どのような意味?」
「クリシェとは具体的にどのようなコード進行?またクリシェを使った代表曲はどれ?」

このように悩んでいませんか?

クリシェはコード進行の技法の1つで、コード自体を変更することなく曲に変化を付け、単調さから脱却させるためのテクニックです。

今回の記事では、クリシェの意味とクリシェの代表的なコード進行4例を解説するとともに、クリシェを取り入れた有名な楽曲も4曲紹介します。

この記事を読んでクリシェの基本情報を理解し、ぜひ曲作りに効果的に取り入れて作曲の幅を広げてください。

1.クリシェの意味とは

クリシェの意味は、コード進行において同じコードが続く際に、そのコードの中の一部の音だけを順番に上げたり下げたりすることを指します。

クリシェを用いることにより、コード自体を変更することなく、同じコードの中に半音もしくは全音の変化というスムーズなラインを奏でることができるため、同一のコードが続く単調さから脱却させることが可能です。

ちなみに、クリシェはコード内の高・中・低音のどの音を変化させるケースもあり、低音を変化させるものは特にベースラインクリシェと呼ばれます。

また、単音だけを変化させるメロディック・クリシェだけでなく、2声以上を変化させるハーモニック・クリシェも存在します。

このように、クリシェはコード進行を作る際の技法の1つで、同一コード内の一部の音を半音もしくは全音上げ下げすることで曲に変化をもたらすのが特徴です。

2.クリシェの代表的なコード進行4例

次に、クリシェの代表的なコード進行を以下の2種類に分けて紹介します。

  1. 1度音下降型クリシェ
  2. 5度音上昇型クリシェ

順番に説明します。

(1)1度音下降型クリシェ

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クリシェの代表的なコード進行の1つ目に、1度音下降型と呼ばれるクリシェが挙げられます。

具体的なコードとしては、以下の3種類がよく使用されます。

  1. C→CM7→C7→C6
  2. Dm→DmM7→Dm7→Dm6
  3. Am→AmM7→Am7→Am6

順番に説明します。

#1.C→CM7→C7→C6

C→CM7→C7→C6のクリシェの場合、最初のコード「C(「ド」「ミ」「ソ」「ド」)」をベースに、下から「ド」「ミ」「ソ」の3音はそのままで、最上音の「ド」を「ド」→「シ」→「シ♭」→「ラ」と変化させていきます。

このコードの中でC7とC6はノンダイアトニックコード(メジャースケールの音のみで構成されていないコード)ですが、下の3音の音を変えることなく保持することにより、コード進行の安定感をキープすることが可能です。

コード内の「ド」(1度)を下降させていくことから1度音下降型クリシェと呼びます。

(実際にはルート音である1度の「ド」音は保持して1オクターブ上の8度の「ド」音を下降させています。)

実際にこのクリシェが取り入れられている曲としてビートルズの「Something」があり、詳細は(1)Something/ビートルズでも説明しています。

#2.Dm→DmM7→Dm7→Dm6

Dm→DmM7→Dm7→Dm6のクリシェの場合、最初のコード「Dm(「レ」「ファ」「ラ」「レ」)」をベースに、下から「レ」「ファ」「ラ」の3音はそのままで、最上音の「レ」を「レ」→「レ♭」→「ド」→「シ」と変化させていきます。

この場合も、DmM7とDm6はノンダイアトニックコードですが、下の3音に支えられて安定感をキープできています。

#3.Am→AmM7→Am7→Am6

Am→AmM7→Am7→Am6のクリシェの場合、最初のコード「Am(「ラ」「ド」「ミ」「ラ」)」をベースに、下から「ラ」「ド」「ミ」の3音はそのままで、最上音の「ラ」を「ラ」→「ソ#」→「ソ」→「ソ#」と変化させていきます。

この場合も、AmM7とAm6はノンダイアトニックコードです。

実際にこのクリシェが取り入れられている曲としてビートルズの「Something」があり、詳細は(1)Something/ビートルズでも説明しています。

(2)5度音上昇型クリシェ

クリシェの代表的なコード進行の2つ目に、5度音上昇型と呼ばれるクリシェが挙げられます。

具体的なコードとしては、C→C(+5)→C6→C7が挙げられます。

C→C(+5)→C6→C7のクリシェ場合、最初のコード「C(「ド」「ミ」「ソ」)」をベースに、下から「ド」「ミ」の2音はそのままで、「ソ」を「ソ」→「ソ#」→「ラ」→「ラ#」と変化させていきます。

この場合も、下の2音が保持されていることにより、コード進行の安定感はキープできます。

コード内の「ソ」(5度)を上昇させていくことから5度音上昇型クリシェと呼ばれています。

3.クリシェを取り入れた代表曲4選

最後に、クリシェを取り入れた有名な楽曲を以下の4曲紹介します。

 

クリシエを取り入れた楽曲
  1. Something/ビートルズ
  2. 恋に落ちて~Fall in Love/小林明子
  3. 歌舞伎町の女王/椎名林檎
  4. Love Love Love/DREAMS COME TRUE

 

順番に説明します。

(1)Something/ビートルズ


ビートルズの「Something」では、イントロ後のメロディーの冒頭の部分「Something in the way she moves~」以降にクリシェが取り入れられています。

コード進行

|C|CM7|C7|F Em|

|D|G|Am AmM7|Am7 D9|

このように、C→CM7→C7の箇所と、Am→AmM7→Am7の箇所に(1)1度音下降型クリシェで紹介したクリシェが使われています。

(2)恋に落ちて~Fall in Love/小林明子

小林明子の「恋に落ちて~Fall in Love」には、サビ後半の「ダイヤル回して手を止めた」の部分にクリシェが取り入れられています。

コード進行

|B♭m F/A |D♭/A♭ Gm7♭5|

このように、B♭mのルート音(コード内の一番低い音)が「シ♭」→「ラ」→「ラ♭」→「ソ」と下降していきます。

(3)歌舞伎町の女王/椎名林檎

椎名林檎の「歌舞伎町の女王」では、最初のイントロ部分にクリシェが取り入れられています。

コード進行

|Bm BmM7/A|Bm7/A BmM7/A#|

|Bm BmM7/A|Bm7/A BmM7/A#|

このように、Bmのルート音である「シ」が「シ」→「ラ#」→「ラ」→「ラ#」→「シ」→「ラ#」→「ラ」→「ラ#」と下降・上昇を繰り返しています。

また、コードトーンも同様に、「シ」→「M7thのラ#」→「M7thのラ」→「M7thのラ#」→「シ」→」「M7thのラ#」→「M7thのラ」→「M7thのラ#」という動きをしています。

(4)Love Love Love/DREAMS COME TRUE


DREAMS COME TRUEの「Love Love Love」では、Aメロ歌いだしの「ねえ どうして」の部分にクリシェが取り入れられています。

コード進行

|D♭  D♭/C|D♭/B  B♭7|
|E♭m  E♭m/D |E♭m/D  F7 |

|B♭m  B♭m/A |B♭m/A♭  E♭7 |
|G♭  A♭ |B♭m |

このように、D♭の「レ♭」が「レ♭」→「ド」→」「シ」→「シ♭」と半音ずつ下がっていきます。

また、同様にE♭mの「ミ♭」が「ミ♭」→「レ」→「レ♭」と半音ずつ下降していきます。

まとめ

今回の記事では、クリシェの意味とクリシェの代表的なコード進行4例を解説するとともに、クリシェを取り入れた有名な楽曲も4曲紹介しました。

クリシェはコード進行の技法の1つで、コード自体を変更することなく曲に変化を付け、単調さから脱却させることが可能です。

この記事を読んでクリシェの基本情報を理解し、ぜひ曲作りに効果的に取り入れて作曲の幅を広げてください。

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